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弥三郎婆

 昔、弥三郎と云う武士が妻子と母を残して武者修業に出かけたが(九百年程前、八幡太郎義家に破れた安部一族の武将の一子)、妻子は悪病に倒れ、母も苦しみもだえた末、鬼女になった。

鬼女は近くの橋のたもとで狠を使い、旅人をおそい金品を奪っていた。人はその橋を「おっかな橋」(恐ろしいの意)と呼び恐れた。武者修業を終え、弥三郎は郷里へと急ぐ途中、橋のたもとで突然斬りかかる者がいた。じっと見据えると、白髪の老婆が何頭もの狠を使い、おそっているのだった。弥三郎は狠を追い払い、老婆の右腕を斬り落したが、すでに老婆の姿はなかった。

弥三郎は、その腕を拾い持ち、なつかしの我家に戻ると、家はあれはて、かすかに奥の間から、うなり声がするので近づいて見ると、母は涙ながら妻子の死を伝え、苦労してお家再興の資金を貯えた事を話した。

弥三郎も修業中の苦労と橋のたもとの出来事を話し、その右腕を見せると、母はたちまち鬼女となり、その腕を取り上げ天高く飛び去った。鬼女は弥彦山(新潟県)へ行ったと云う。

弥三郎は母を哀れみ屋敷内にお堂を作り、「妙多羅天」としてまつった。(現在、風邪の神として信心厚い)

弥彦山へ去った弥三郎婆は、今迄の事を恥じ、貧しくて結婚できない男の嫁さがし等して人達から縁結びの神としてあがめられたと云う。

(武田正氏「弥三郎婆」より)

弥三郎婆