国産松茸を年に一度はご家庭で!

シラミ五升の質入れ

佐兵ざあ、うんとシラミたかりだったど。そしてまず、みんなだ冬になっても寒い姿してるもんだから、むごさいと思って、胴服(どんぶく)呉(く)っじゃりするのだど。
そしてもらったときには、着っけんども、行きあった人で自分より寒そうな格好していっど、片端から脱いで着せんのだど。んだから、何時でも体さ食っついていねんだど。衣装はなぁ。自分も喜び、人も喜びさせて、寒がっていっけんども・・・、そういう人であったど。
あるとき、入生田(いりうだ)の金持の家から新しい綿入れもらったもんだから、酒大好きなもんだから、質屋さ持って行って、酒代拵えにいったんだど。そうすっど、シラミたかり知ってるもんだから、番頭は、
「その綿入れでは、シラミもいたべなぁ」
「いた、シラミ」
「んじゃ、シラミがらみ、置くのかはぁ」
「ほだ、シラミがらみ置いて呉ろはぁ」
「ほんじゃ、なんぼと書いたらええがんべ」
「ほだ、ほんじゃ、シラミ五升とでも書いて呉(け)ろはぁ」
 質札さ綿入れ一つにシラミ五升と書いたんだど。
 そして行って、佐兵、何考えて行ったんだかも知しねで笑っていだごでなぁ。そしたら間もなく質受けに行ったど。こつなしだから、早く行ったべぁ、そして番頭さ、
「質受けて行くべはぁ」
「早いな、佐兵」
「んだ、寒いから」
なて、もって来て質札と交換して、佐兵、
「なんだまず、おれ、質に置いたの、まだ足んね」
なて、
「何足んね」
「ほら、ここさ書かっていたべ、シラミ五升と・・・、そいつもらって行かんなね」
「なんだ、佐兵、シラミ五升なて、そいつ、おどけだったどら・・・」
「おどけであんまえ、ここさ書かっていたもの」
 やんやと店先で言うもんだからはぁ、旦那、こりゃまた、佐兵にやらっじゃんだと思ってはぁ覚悟して出はってきて、番頭と二人喧嘩などしてるもんだから、
「そいつぁ、佐兵にはまいったんだ、まいった、まいった」
 佐兵にやらっじゃんだ、まず仕方ない。んじゃ酒代であやまって、まずシラミはいなくなったんだから、こっちから買うからはぁ、売って呉(け)ろはぁと、酒代払ったんだって。

シラミ五升の質入れ