国産松茸を年に一度はご家庭で!

屋根葺きと問答

佐兵が、あるとき、そこらうちめぐって歩くもんだがからな。あの川樋というどこさ行ったときの話なんだな。
そこに、通し行って泊ってる家さ行ったれば、屋根葺きが始まっていたったど。四人(よったり)ばかりの屋根葺きがいて、佐兵の姿見つけっど、
「よし、また一つ面白い話ばっかりすっから、あいつ馬鹿にしてみんべ」
と話した。そしてまず知恵くらべから、何か、何でも較べ方してみんべ、
「あまりええがんべ」
と、佐兵がいうもんだから-佐兵はたしか体格のええ人であったんだな-そこの力もった屋根葺きが米俵を背負ってみせたんだど。そいつが、こう立てて背負うものを、横にだから、なかなか大変なんだってな‥‥。横に背負うの。横に一俵背負ったど。そうすっどそだごどしねげんども、佐兵は二俵背負ってみせたんだど。そうすっど、負けてしまったわけだ。
「ほんじゃ、まず賭けくらして負けてもいらんね、屋根葺き、おらだするみたいな仕事されっか」
と。
「される。人のすっこど何でもされべちゃえ、おれも人だもの」
そして屋根さ登って行ったど。そうすっど屋根葺きぁ一生懸命で始めっど、屋根葺きのように鋏(はさみ)は使うし、ペタンペタンとするし萱(かや)でええあんばいにならすし、本職より上手なんだど。そうすっど、
「こんじゃ、参ったな」
と。そしてこんど、置賜から最上の方さ行ったんだから、
「置賜の破風じゃ、台所の上さ上げんでないけがら‥‥」
「ほんねな、座敷ど間(あいだ)っこさ破風おくなぁ」
そしたば、そいつも負けたんだって。やっぱり置賜では破風は座敷と台所の間さ拵(こさ)うからな。そいつも負けたわけだ。何もかにも負けて、そしてこんどは、いま一つの賭け、
「ほんじゃ、字はなじょだ」
と、字の問題になってきたんだな。
「ほんじゃ、木二つ並べだな、何と読むごんだ」
「なんだ、そんげな字知(し)しゃねなが、林だべちゃえ」
「ほんじゃ、桜は何と読むごんだ」
「あいつか、木の傍さ、二階(貝)の下に女がいると書くべちゃえ」
いや、何もかにも負けてしまっては、とうとうはぁ、前の約束どおり、負けたごんだれば、屋根葺きが十杯の酒を買うたど。佐兵負けたときは屋根葺きのテコをして歩くことのごんだったげんども、佐兵に負けではぁ、まず十杯の酒買わせらったど。

屋根葺きと問答